『扉の向こうには、すべての時間があった』
五つ星評価:★★★★★
災害をテーマに、過去の痛み・喪失と向き合う物語

■作品情報
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| 公開日 | 2022年 11月11日 |
| 制作会社 | コミックス・ウェーブ・フィルム |
| 上映時間 | 122分 |
| ジャンル | ロードムービー/ファンタジー/青春 |
■あらすじ
九州の静かな港町で暮らす17歳の少女・すずめは、
「扉を探している」という旅の青年・草太と出会う。
その後、すずめが迷い込んだ廃墟で見つけた古い扉から、
日本各地に災いをもたらす存在が解き放たれてしまう。
すずめは草太とともに、災いを鎮めるため、
日本列島を巡る“戸締りの旅”へと出発する。
■五つ星評価
| メッセージ性 | ★★★★★ |
| キャラクター | ★★★★★ |
| ストーリー | ★★★★★ |
| 作画 | ★★★★★ ★ |
| 余韻 | ★★★★★ |
■ネタバレなし感想
映像と音の情報量がとにかく多く、劇場で浴びる体験そのものが強く印象に残る作品。ロードムービー形式でテンポよく場所が移り変わり、日本の風景が次々と映し出されるのが心地いい。一方で、物語の中心は派手な冒険ではなく、すずめという一人の少女の感情にしっかり置かれている。ファンタジー要素は分かりやすく、初見でも置いていかれにくい構成で、新海誠作品の中では比較的ストレートな感触を受ける映画だと思う。
この作品の本質は「災いを止める話」ではなく、「向き合わずに閉じてきた感情と向き合う話」だったと感じる。すずめが旅の中で出会う場所や人々は、どれも過去の痛みや喪失と地続きで、戸締りの儀式そのものが弔いの行為として描かれているのが印象的。椅子になった草太という存在も、コミカルに見えて、実はすずめを“立ち止まらせないため”の装置として機能している。終盤、すずめが過去の自分に語りかける場面は、感情の処理を言葉にして肯定する強さがあり、観る側にも静かに刺さる。派手さや強いメッセージ性の裏で、とても個人的で、やさしい終わり方をする映画だった。


