『その才能が、血筋を凌駕(りょうが)する』
五つ星評価:★★★★★
国宝に近づくほど、人が個人から離れてくのを見てて複雑な気持ちになった。

■作品情報
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| 公開日 | 2023年6月2日 |
| 制作会社 | 東宝 |
| 上映時間 | 175分 |
| ジャンル | ヒューマンドラマ |
■あらすじ
戦後の混乱期、日本の伝統芸能・歌舞伎の世界。
名門の家に生まれた御曹司と、任侠の家に生まれながらも
芸の才能を見出された少年。
血筋と才能、宿命と努力が交錯する中で、
二人は芸に人生を捧げながら、それぞれの道を歩んでいく。
芸とは何か、人生とは何かを問いかける壮大な人間ドラマ。
■五つ星評価
| 見ててつらい度 | ★★★★★ |
| キャラクター | ★★★★★ |
| ストーリー | ★★★★★ |
| 演技/演出 | ★★★★★★ |
| 余韻 | ★★★★★★ |
■ネタバレなし感想
とにかく情報量と重さが桁違いの映画。上映時間は長いのに、芸に人生を捧げる人間たちの覚悟と執念が画面に詰まっていて、途中で気が散る暇がない。歌舞伎の舞台シーンは圧倒的で、美しさと緊張感が同時に迫ってくる。一方で、物語としては華やかさよりも苦しさのほうが強く、成功や称賛がそのまま幸福につながらない世界が淡々と描かれる。エンタメというより、覚悟して観るタイプの作品。
血筋を持つ者と、才能だけで食い込んだ者、そのどちらにも救いがない描き方が徹底しているのが印象的だった。芸を極めれば極めるほど、個人としての選択肢は削られていき、誰かの期待や伝統に人生を明け渡していくしかなくなる。称号としての「国宝」は栄誉の象徴であると同時に、逃げ場を完全に奪う呪いのようにも見える。最後まで残るのは達成感ではなく、芸と引き換えに失われた時間や感情への静かな虚無で、だからこそ強烈な余韻を残す作品だった。
